「アジア会議」2020年5月25日 講師/鈴木 馨祐 自由民主党・衆議院議員・外務副大臣

2020年05月25日
  

「2030年を見据えて」

 これまで力強い成長を続けてきた中国経済だが、人口減が始まり、高齢化も進んで鈍化傾向にある。特区や一帯一路で国内の過剰生産を消化してきた成長モデルは付加価値を高めることには成功しておらず、今後どこまで通用するかが注目すべきポイントだ。一方、わが国も少子高齢化が進むなかで、一人当たりの生産性を伸ばすための環境づくりが大切だ。いかに人材と資金が最も生産性の高いセクターに向かうか、めまぐるしく変化する需要にフレキシブルに対応できる供給サイドの改革を進められるかが大きな課題となる。デフレの本質はミクロでは供給過剰による価格下落。ここにメスを入れる構造改革が必要だ。
 米国ではこの30年の間、従来なかった新たな需要を、マネタイズし、マーケットにしていくダイナミズムがあったが、日本はできてこなかった。時価総額のトップ企業の顔ぶれが大きく変わった米国に対し、日本国内では合併などのケースを除いてほぼ変わらないことからも明白だ。
政治・外交面においては、地政学的な観点から次の点が重要だ。まず、アメリカは歴史的に国際秩序に積極関与する「大きな島国」と極めて内向的な「小さな大陸」で振れてきた。これが今後どうなるか。またアメリカの西太平洋における影響力を排除することを目的とした中国の軍事拡張。アジア諸国もその中で日本にアメリカをつなぎ止め、日米で中国と対抗することを望んでいる。日本は地政学的に中国の太平洋進出の「壁」でもある。

 質疑応答では、コロナ以降の経済の行方や香港問題、反グローバル化など、さまざまなトピックに質問が及んだ。鈴木氏は、「設備投資はしばらく落ち込み、輸出が回復するには数年かかるのでは。リーマンショック時のように、失業のピークは10~14カ月にくる可能性もある」と予測。そのうえで、「これまでの施策はV字回復を前提としてきたが、元に戻らない可能性も踏まえて供給サイドの構造を変える新たな施策が求められる」とした。また、2030年に向かって「過剰な社会保障に頼るのではなく、自由にチャレンジできる、挑戦が報われる国をつくることが大切だ」と述べた。