「日韓関係の現状について」
日韓関係が最悪の状況を更新し続けている原因は歴史問題であるが、問題の根源は日韓関係というより、むしろ韓国が自国の歴史をうまく精算できていないことにある。1948年に北朝鮮と分かれてできた韓国だが、国家の成立を自ら戦って勝ち取っていないという負い目があり、日本に勝って勝ち取ったはずだったのにという歴史修正願望が慰安婦や「徴用工」といった問題における日本への理不尽な要求につながっていると考える。
韓国は大国に挟まれた朝鮮半島国家の宿命として、伝統的に大国につくことによって自らの安全を守る事大主義をとってきた。わが国が歴史上、自国の領土を離れて戦争をしたのは、太平洋戦争を除けばすべて朝鮮半島がらみであった。白村江の戦い、日清戦争、日露戦とも、朝鮮半島に敵対的勢力を排除するために戦った戦争だ。それは、朝鮮半島が日本と極めて近接しているという地政学的要因によるものである。そして、韓国は、日本統治、米ソ冷戦時を除けば常に中国の影響下にあった。いまは米中という二大大国の間でバランスをとる“独自”外交、悪くいえば二股外交を展開している。韓国は、世界の半導体市場に大きなシェアを持ち、経済的、軍事的にも日本に拮抗するまでに成長を遂げている。日韓間の信頼関係が現在損なわれているにせよ、中国のみに追いやらないためにも日米韓の連携は不可欠だ。文政権は南北融和、積弊清算を掲げる特異な政権ではあるが、韓国全体には北朝鮮を脅威と捉え、日米韓の協力が重要と考える勢力もいる。また、韓国内でベストセラーとなった『反日種族主義』や、1月の慰安婦逆転判決などにみられるように、韓国社会自身の変化も起こっている。いまの文政権だけをみて韓国全体を判断するのは早計だ。
松川氏は、自身の駐在経験も織り交ぜながら、韓国社会の現状、日韓関係を正常化にリセットさせた安倍政権の功績、韓国と北朝鮮の関係性の変化などについて解説。地政学上の日韓の違いなどに言及し、「大局的にみれば日本の最大の課題は中国であり、そのときに隣人である韓国という存在を中長期的に考えるべきだ」と述べた。