「米中関係」
中国が豊かになれば民主化するはずだという西側諸国の思惑ははずれ、中国は民主化しないまま、米国と肩を並べるまでの大国となった。いまや中国が民主主義国家として軟着陸するのは難しく、米国も対中関与政策を見直しつつある。毛沢東は第二次世界大戦後、急ごしらえの共産党を率いて大躍進政策を推し進め、3千万人以上の餓死者を出した。権力を失いかけたが、文化大革命によって復活した。毛沢東は権力闘争のプロであった。20世紀末に東欧の民主化や旧ソ連の崩壊が起こるが、ここで中国共産党に芽生えた危機感、独裁権力への執着に日本や西側諸国が気付くことはなかった。中国は未だに国民国家になれていない。「中国」という言葉が出来たのは20世紀以降のことである。「共産中国人」は中国人のアイデンティティにならなかった。それは「ソ連,人」、「ユーゴスラビア人」が生まれなかったのと同様だ。中国共産党は、自らの独裁権力の正統性維持に苦しんでいる。そのために中国共産党が90年代から喧伝しているのが、「中国共産党がいまの豊かな中国をつくった」という建国神話であり、「中華民族5千年の栄光」だ。それが少数民族問題を悪化させている。習近平は毛沢東と同様、権力闘争のプロに過ぎず、共産党独裁政権の存続しか頭にない。学習塾閉鎖など小手先のことをやっている。格差拡大、反腐敗に対して対症療法以上のことはできず、また、国民のナショナリズムを煽るだけ煽っている。しかし、格差や腐敗に対する国民の不満も、燃え上がった愛国主義も、いずれコントロールできなくなるだろう。
中国の軍事力増強は止まらない。米中は核兵器国であり全面戦争はあり得ない。大きくなり過ぎた中国の軍事的冒険を止められるのは米国をおいて他にないが、米国のリーダーシップは弱まっており、米国だけに中国を任せることはできない。北西太平洋で頼りになるのは日本しかない。日本がパートナーとしてアジアにおける自由圏を支えることが不可欠だ。日米豪印のクアッドだけでは足りない。欧州、韓国、ASEANの取り込みが日本外交の課題である。中国は権力闘争のプロが運転しているように見えて、実は猛スピードの10トントラックのようなもので、運転するのは容易ではない。周辺国や西側諸国がしっかり団結して、中国が暴走して事故を起こさないようにさせなければならない。