「政民合同會議」2021年1月12日 講師/河野 克俊 前防衛省統合幕僚長

2021年01月12日
  
「尖閣諸島の現状と今後の対応」
 

 中国が建国された1949年当初、主力は陸軍であり、尖閣諸島が問題にされることはなかった。状況が一変したのは鄧小平の改革開放政策で中国の海洋進出が始まり、海軍強化に乗り出してからだ。90年代以降、経済力をつけてきた中国は米と太平洋を二分する野望を露わにし始めた。

 中国の第一列島線支配を阻むのは香港、台湾、尖閣諸島だが、香港はすでに陥落したに等しく、台湾もサイバー攻撃など中国からの大きな圧力に晒されている。尖閣諸島も中国公船『海警』が領域内で操業を続ける日本漁船を“不法漁”“偽装漁船”と追いかけ回す有様で、日々攻撃圧力が増している。これはどこまで圧力を加えれば米国が乗り出してくるかを見極めているためだ。菅首相は次期大統領のバイデン氏に日米安保条約5条の確証を取ったとしているが、安保条項の確認に過ぎない。米国が出てこないという確証を得れば、中国は間違いなく尖閣を奪取しようとする。そのときに日本は尖閣を守りきれるか。台湾有事の際には尖閣、南西諸島にまで影響が及ぶことは必至。中国は米国を刺激しないために、尖閣は局地戦にとどめる見込みで、そこがわが国のつけどころとなるだろう。

 バイデン次期大統領は“同盟国重視”とはいうが、それは米国主導ではなく、あくまで共同で行うという意味だ。次期政権はトランプ大統領の弾劾訴追などの対応で内政に費やされ、トランプ政権以上に内向きとなることが予想される。

 北朝鮮は原子力潜水艦の検討についても初めて言及した。ミサイルで威嚇後、対話路線に切り替えて米朝首脳会談に持ち込めた成功体験から、バイデン政権発足後、ミサイル実験を再開する可能性は極めて高い。

 河野氏は、統合幕僚長時代に導入したイージス・アショア計画の撤回について不満を述べるとともに、「撤回するのであればこれまでタブー視されてきた適地攻撃についての議論も再開すべき」との持論を展開した。また、後手後手の対応で支持率の下落を招いている菅政権について、「新型コロナウイルスの感染拡大阻止と経済活動の両立は難題だが、トップリーダーは、国民に希望を与えるメッセージを発するべき」と語った。