「韓国はどこへ行く-ポスト朴槿恵への備えを」
昨年末、慰安婦問題で日韓合意が成立。国際的な日本批判を回避するために何らかの外交決着は不可欠であり、韓国政府の責任で元慰安婦支援の財団を設立させ、すべて対応させることにしたのは正しい。日本政府が財団のために拠出する10億円を巡っては、ソウルの日本大使館前に設置された慰安婦像の撤去の見通しが立たないままでは時期尚早だとして日本国内でも保守・左派双方から反発を招いているが、一刻も早くわが国政府は10億円を拠出し、すべての責任を韓国政府に委ねるべきだ。
朴槿恵が大統領に就任して3年が過ぎたが、これといった業績はなく、辛うじて慰安婦合意を“業績”と認識。韓国側も今年中にも行われる予定の日中韓首脳会談までに慰安婦像の撤去を視野に入れているが、そうなれば韓国内で批判が高まる恐れがあり、任期最後の2017年に破れかぶれで撤去する可能性もある。韓国は民主化以後、与野党で保守政権と左派政権で入れ替わってきた。今年4月韓国の総選挙で与党は大敗し、次は間違いなく左派勢力が主導権を握ることが予想される。しかし野党が分裂を克服できるのか、与党が国連の潘事務総長を候補に担ぐのか注目だ。
韓国内ではメディアのコントロールにより安倍政権=悪という世論が形成されているが、それだけリーダーシップがあり、強いメッセージを出せるという羨ましさの裏返しでもある。韓国内で高く評価されている日本のリーダーは中曽根、小泉といずれも長期政権であり、長くやることが日本のリーダーシップを対外的に印象づけることにつながる。
韓国は今後、大陸勢力に接近するのか、あるいは日本のような海洋勢力と接近するのかにも注目したい。朴槿恵政権は、北への影響力を持つことを目指し対中接近を図ったが効果はなかった。韓国が中国に接近するのは憧れではなく、中国を利用したいというのが本音だ。
日本はこれまで韓国に深入りし過ぎた。韓国は歴史的に周辺国を巻き込むのが巧みで、引き込んで利用はするが決して同化はしない。日本併合にしろ、日本はうまく引き込まれたのだ。今後も「南北統一に向けた日本の役割の重要性」などという甘言に日本は動じることなく静観すべきだ。
40年以上にわたり韓国と関わり続けてきた黒田氏は、現地でつぶさに見聞きした韓国の情勢、韓国人の考え方を詳細に解説。地政学上、わが国がいかに朝鮮半島、アジアと付き合うかについて「海峡を渡るときには用心せよ」と訴えた。その後の質疑応答では北のミサイル実験を受け、韓国での核武装論について質問が及んだが、「北が行動を起こすたび韓国内で議論は出るが現実味はなく、感情論に過ぎない」と一蹴した。