「政民合同會議」12月10日 講師/下村 博文 前自由民主党政務調査会長・元文部科学大臣・衆議院議員

2021年12月10日
  
「岸田政権の課題と政策を問う!!」
 

 コロナによって、サプライチェーンの中国依存やデジタル社会への対応の遅れ、憲法における緊急事態条項の不備など、日本の脆弱性が明らかになった。長期化するデフレ経済や国際社会におけるプレゼンスの低下、少子高齢化社会など、コロナ以前からの課題も多い。しかし、前向きにとらえるならば、コロナ禍を経て日本は変革できる。GDPの拡大が重要なのは当然だが、全ての人が幸福を実感できる社会をつくり上げることが政治の役割だ。

 人生の「幸福度」や「充実度」は経済状況、教育、人間関係、家庭環境、労働環境、社会環境など多岐にわたる分野から総合的に測るものだ。これからの時代はGDPではなく、国民一人ひとりのウェルビーイング(well-being)、幸福、充実度を測る物差しとしてGDW(国民総幸福度/国民総充実度)が大切になってくる。

 世界各国でウェルビーイングへの関心が高まっており、近年は日本でも日本経済新聞社を中心にGDWを経営指標に採り入れる取り組みを実施し、2022年度文部科学省予算から200億円規模の「Well-being研究費」を計上するなど、関心は高まりつつある。

 しかし、日本は、社会的寛容が低く、人生の選択肢が少なく、世界幸福度ランキングは56位。若者の幸福度や自己肯定感も低い。教育も、これまでの受験能力主義から、学生一人ひとりのwell-beingを高める教育へと変えていく必要がある。教育は未来への先行投資だ。教育国債の発行など、教育分野への投資額を拡大するなど、国民運動にしていきたい。人生100年時代の中で「働きながら学び、学びながら働く」社会を目指して、年齢に関係なく学べる環境を整備することも必要だ。

 下村氏は、ダボス会議でプレゼンしたというわが国が誇る道徳教育についても解説。「国際社会の中で『共生』や『道徳』を国家として持ち合わせている国は他になく、日本はハードパワーの外交だけでなく、文化・伝統・精神といったソフトパワーの外交を積極的に展開していくべき」と語った。

 このほか、世界初の「幸福予算」を創設したニュージーランドの例や、自身が会長を務める超党派日本チベット議員連盟の活動についても言及。岸田政権の人権外交に対し、「中国の新疆ウイグル自治区などでの人権侵害を非難するため今国会で決議すべき」と主張した。