「最近の国際情勢と日本外交」
開城工業団地から労働者を撤収させるなど慌ただしい動きをみせる北朝鮮。金正恩体制となったいまも、韓国哨戒船撃沈にみられる金正日体制の政策を継承していることは明らかだ。朝鮮半島で休戦協定が結ばれて60年余、核を保有し、国家として認められたい北が平和協定ほしさに臨戦態勢をとっているものと考えられる。南北開戦となった場合、米韓にはすでに報復準備が整っており、燃料不足が懸念される北に戦争を続けられる能力はない。いずれは反撃しない代わりに米朝直接会談、食糧支援を求める流れになるのではないか。いずれにせよ日本にはそれほどの影響はないものと思われる。最近、中国共産党の機関紙副編集長が英紙に、南北統一、あるいは北に親中政権をつくれ、という趣旨の論文を掲載したことが話題になった。北朝鮮に対する中国の態度は硬化しており、早々に六カ国間協議の再開も視野に米中会談がなされる可能性がある。
安倍政権になり官僚の士気があがっている。新日銀総裁も期待大だ。TPP交渉も粛々と進むだろう。参院選まで安倍内閣は思い切ったことはできない。自公連立が続くかは維新の会の動向によるところが大きい。自公連立が自民党の堕落の始まりであった。選挙で公明党の抱える運動員に頼り、公明党の護憲路線に反対できなくなったためだ。いずれにせよ、政局が落ち着くのは参院選後であり、参院選で自民党が安倍首相の引責辞任のような大敗にでもならない限り、あと3年は安定政権が続くだろう。
米国との交渉も参院選以降本格化するだろう。前クリントン国務長官が敷いたアジアに軸足を移したピボット政策、中国包囲網路線をケリー国務長官は継承するだろうが、唯一の気がかりは米の体制が激変し、国防、防衛担当がその道の専門家でなく、オバマの友達チームになったことだ。
中国は台湾を馬英九政権の3年の間になし崩しに牽制しようと策を練っている。尖閣問題は、党・国家・軍の三権を失う胡錦濤が強硬派であったというアリバイづくりに利用されたものだ。私の経験では、外交上で理解しがたいことの裏にはたいてい権力闘争が絡んでいる。かつての文革がそうであった。共産党は権力さえ固まれば独裁者の一存で決まる。習近平体制となり尖閣問題は収束するだろう。