「政民合同會議」2016年8月8日(月) 講師/施明徳 民進党第6代主席(台湾)

2016年08月08日
  

「蔡英文新政権の行方と壮絶な人生を綴る」

 日本の統治下にあった1941年に4歳で米軍の空襲を経験し、7歳のときに2・28事件があったことは幼いながら強く印象に残っている。台湾は常に外来政権の統治下にあったが、成長する中でいつか台湾人の国をつくることを心に決め、この信念がいままで私を支えてくれた。1962年に「1つの中国、1つの台湾」を唱えた罪で逮捕され15年間投獄。出獄後、民主化運動に携わり、美麗島事件で再び10年投獄された。服役中の85年には江南事件に抗議して無期限ハンガーストライキに突入。87年に蒋経国によって特赦を言い渡されるが、無罪なのに特赦を受けるいわれはないと拒絶し続け、90年、李登輝総統時代になって「判決無効」宣言を受け、ようやく自由の身になった。服役期間は通算25年半に及んだ。この間、20代で全ての歯がなくなる厳しい拷問や、母の死に目にも会えず、3000日以上に及ぶハンストなど、大きな犠牲を払わなければならなかったが、不利な状況下で環境に適応させることが大切であり、逆境、苦難のときこそ人は成長できる。どんな困難なこともいつかは終わる。あきらめないことだ。
 施氏は、25年半に及ぶ獄中生活の中で、国際法、外交、政治などを研究して多くの著書を出版し、いまも台湾の現状をいかに打破するかに関心を寄せている。リーダーとしての大切な要件として「権力は人を傲慢にする。いかにプレッシャーと戦い、誘惑を退けるか」「周囲の人を励まし、高めることが組織や事業の発展につながる」と語った。また、獄中生活を「先が見えない辛い時期だった」としながらも、「憎むことにとらわれず、人を許すことが大切だ」と振り返った。
 質疑応答で蔡英文政権の行方について質問が及ぶと、「元民進党党首としてではなく、あくまで個人の感想」と前置きしたうえで、「台湾はより親日・新米になるだろうが、同時にどう中国に歩み寄るかも課題となる。中台は冷戦状態のようなものであり、対中依存度がかつてないほど増している現在、台湾経済への影響は深刻だ」などと語った。また、「台湾の民主化は多くの人の犠牲を払って勝ち得たもの」と力強く語ったほか、「中国が台湾に武力侵攻することはない」、南シナ海、尖閣諸島についても「武力衝突はないだろう」と予測した。