「習近平の大問題」
共産主義社会である以上、習近平の大問題とは、中国の大問題ということになろう。中国の一番の問題は、経済データなど、広い国土、どの情報を信じていいかわからないことだ。自然科学と違い、世の出来事を真実と言い切る思想は社会科学にはないが、説明責任を果たさないのは、自身にとって都合の悪いことは、すべて“フェイクニュース”と切って捨てるトランプ大統領も変わりはない。共産主義へ嫌悪感を抱く米国と覇権国に挑戦する新興国として、米中は東西冷戦のような形に再び動いていくのではないか。
しかし、中国が米国に取って代わるほど世界の信用、信頼を集め、覇権を持つことは現状ではありえない。世界の通貨の取引の44%を占める米ドルに比べ、中国元はわずか2%に過ぎず、デジタル通貨は別として、元が基軸通貨になる可能性はほぼゼロといってよい。
反面、中国が米国に勝てる可能性があるのは科学だ。科学者の数では中国が米国を20万人以上上回る。中国は通貨や金融力では勝てないが、科学では将来的に米国を間違いなく凌駕していくだろう。
丹羽氏は、中国の少数民族の詳細や、顔認証などセキュリティ強化が進む中国社会の現状、習近平に権力が集中している実態などについても言及。「地球上に13億の民を持つ資本主義国家は存在せず、中国は国を挙げて壮大な実験を行っている」とし、「日本が中国の少数民族から評価が高いのは、日本を少数民族と考えているからではないか」「日本は中国と戦争をしても勝ち目がない。そもそも資源もなく、1.5億人足らずの島国に魅力など感じていないのではないか」との見解を示した。このほか、貧富の差が拡大する中国の現状も指摘し、「最終的には中国は6つの合衆国になるのではないか。そうなれば貧富の差は問題にならず、アジアの平和も維持できる」との見通しを述べた。
質疑応答では、「中国でビジネスをするときに重要なポイントは?」との質問に対し、中国大使も務めた自身の経験から、「中国で儲けられるようになるには10年はかかる。知財保護と、現地で信頼できる番頭を持つことだ」などと語った。その後も、活発なやり取りが行われた。