「アジア会議」2019年7月30日(火) 講師/高永喆 拓殖大学主任研究員・元韓国国防省北朝鮮分析官

2019年07月30日
  

「北朝鮮核問題と米中貿易戦争の展望」

 北朝鮮は中国との関係を保持し、米国から攻撃されないために今後も核を保有し続けることは間違いない。旧ソ連、中国は核を保有していたからこそ米国とわたりあい、国交正常化することができたのだ。米国が北の核保有を容認できないのは、北が核を放棄しない場合、日韓台にも核武装名分が発生するからだ。一方、北が核を保有し続けるには危険も伴う。独裁体制を支える側面がある反面、体制を崩壊させる火種ともなりかねない。
 北朝鮮がCVIDに踏み出せば終戦宣言や制裁解除及び米朝国交正常化の可能性も高いが、核凍結にとどまれば緊張から対話決裂という悪循環にはまりかねない。2020年までに北が核を放棄しない場合には、来年11月の再選を目指すトランプ大統領は制裁、軍事圧力を継続させるのみならず、軍事行動という強硬策に打って出る可能性もある。また、北が核を放棄し、経済支援によって豊かになれば反政府デモが起こり、独裁体制が崩壊することも考えられる。北朝鮮国内に携帯電話は600万台普及しており、すでにその素地は十分にある。
 高氏は「企業経営者であるトランプ大統領は北朝鮮の非核化を必ずやり遂げる」と断言し、米国の対北朝鮮政策の様々なシナリオについて解説した。このほか、海洋国家の歴史や日米それぞれの経済成長を牽引してきた海軍出身者の系譜についても言及し、「これまでパックス・ロマーナに始まり、スペイン、大英帝国といずれも海洋国家が世界を支配してきた。旧ソ連が分離独立崩壊への道を歩んだように海洋国家が覇権国であり続けた例はなく、中国もその例に漏れないのではないか」「80年代にレーガン大統領が宇宙戦争・軍備競争で旧ソ連を分離独立崩壊させたように、トランプは中国の分離独立崩壊を目指している」との持論を述べた。
 また、韓国・文政権について「すでに解決済みの慰安婦や徴用工問題を反日感情を煽るために蒸し返した」と批判。「しかし反日感情を煽るほど韓国経済は悪化し、政権が崩壊する恐れもある。今秋ごろに文大統領が対日姿勢を改める可能性もある」と語った。
 その後の質疑応答では文政権の支持団体や欧米で暮らす脱北者の実態など、様々なトピックについて議論が及んだ。