「日本の近隣諸国との外交」
冷戦終結後30年経ち、先進国と新興国の国力の格差は縮小したが、グローバリゼーションの結果、民主主義国家の中で所得格差が拡大し、ポピュリズムが台頭。外交面では国際協調主義からより自己主張の強い傾向が出てきた。令和になってもこの傾向は変わらず、トランプ政権にみられるような自国利益中心主義、排他的なナショナリズムが世界を席巻するのではないか。
中国との経済的相互依存関係が世界で大きくなった現在、中国を孤立させることは難しく、今後、米中の対立が本格化していくことは間違いない。米中両国の国力は拮抗し、中国は建国100周年の2049年までに米国を追い抜く可能性が高いが、経済成長率が低下することは必至。共産党が国内の引き締めに向かい、中央集権を推し進めるか、あるいは破綻する可能性もないではない。米国は自国ファーストで同盟国との関係で信頼を損ね、世界での影響力は失われていくだろう。日本は、中国との関係について安全保障面、貿易面において、牽制と関与のバランスを取ることが不可欠だ。
いまや中国の経済力は日本の2.5倍に達してしており、中国の覇権確立を阻止するには日米関係をさらに強固にする必要があるが、現トランプ政権下では日米安保体制が不安定になる恐れもある。そうならないためには、日本が安全保障面での役割を拡大していくことを真剣に議論していかなくてはならない。同時に豪、印、ASEAN諸国、韓国との安全保障協力など、安全保障のネットワーク拡大は必須。軍事的信頼醸成については中国を巻き込んだ枠組みも作るべきだ。
朝鮮半島は日本にとって地政学的にも重要な地域だが、日韓関係で信頼が損なわれていることが残念でならない。潜在的に大きな可能性がある両国の関係を修復させるべきだ。北朝鮮との関係では拉致問題の解決のためにも視野を広げ、非核化に向けた資金負担や検証の手立てなど、交渉のプロセスで日本の存在感を示すべきだ。
田中氏は、このほか北方四島返還のシナリオについても解説。ロシアとの平和条約締結に向け、刺激すまいと日本が努める一方ロシアの立場がどんどん固くなっている最近の現状を批判。「将来の対ロ関係含め、政府の国民への説明がなされるべきだ」と語った。