2023年7月10日「政民東京會議」講師/下村 博文 自由民主党元政務調査会長・元文部科学大臣・衆議院議員

2023年07月10日
  

今後の重要政策課題について

 安倍元首相が凶弾に倒れて一年。安倍氏は理念型の政治家であると同時にリアリストでもあり、氏の果たした役割は大きかった。8日に都内で執り行われた一周忌では昭恵夫人が昨年の葬儀に次いで吉田松陰の留魂録に言及。我々清和政策研究会(清和研)は、自民党内で唯一 “政策”を冠する派閥として安倍前会長の蒔いた多くの種が花ひらき、前会長が実現できなかった政策を成し遂げるという責務を果たさねばならない。

 まず取り組むべきは防衛費の増額だ。5年後に実現すれば日本の防衛費は世界3位となる。安倍氏は核シェアリングについて言及し、台湾有事は日本の有事と認識していた。一部メディアからは右翼的発言とも受け取られていたが、ウクライナ問題ではウクライナに平和憲法があっても簡単にロシアに攻め込まれてしまうことが明白になった。いまの日本は中国、北朝鮮、ロシアの南下政策を考えればウクライナ以上に危険で、これまでと同様の防衛政策で日本は守りきれない。

次に取り組むべきは積極財政による日本経済の再生だ。わが国は30年賃金が上がらず、デフレからも脱却しきれていない。財政規律だけを守っていては少子高齢化のなか、日本の発展はない。

 憲法9条の自衛隊明記、緊急事態条項の追加、教育の充実も喫緊の課題だ。清和研は政策に自衛隊明記だけではなく、交戦権を認めないという憲法9条2項についてもタブー視せず、深い議論を進めていく考えだ。ただ、国民の7割の賛成を得られるような内容でなければ、英国のEU離脱にみられるような国家の分断を招く恐れがある。

 皇室の問題もある。男女平等、ジェンダーフリーの世の中だが、これまで2700年近くにわたり、危機を乗り越えて男系男子の継承を守ってきたこと自体が日本の伝統だ。旧宮家の皇籍復帰も含めて慎重に議論を重ねていくべきであろう。

 併せて、国家ビジョンとして「GDW(Gross Domestic Well-being)興国論」も提起したい。GDPに代わり、「Well-being」(国民一人一人の幸福度(精神的・社会的・身体的に良好な状態である)に焦点を当てたものだ。Well-beingが高い国ほど労働生産性が高いことが米国の研究でも明らかになっている。

 自民党の最大派閥である安倍派の会長代理を務める下村元文科相は、安倍氏の訴えていた「日本を、取り戻す」を実現させるために清和研の取り組む数々の政策立案について詳細に解説。AI時代の到来を見据え、国家ビジョンとして、“教育”に代わり「啓く・育てる」に力を入れる「啓育立国」の実現に意欲を見せた。今回はメディア関係者も多数出席しており、質疑応答では活発なやり取りが行われた。