『「台湾有事」~その時日本は~』
中国はロシア軍のウクライナ侵攻を綿密に分析し、台湾侵攻のシミュレーションを着々と行っているだろう。中国と台湾とでは陸海空とも兵力に圧倒的な開きがあり、台湾は士気が高いものの、装備は中国に比べ古いのが実状だ。
安倍元総理は在任中、「台湾有事は日本の有事」と繰り返していた。中国が台湾侵攻を決断するには、台湾が独立を宣言したとき、あるいは国連加盟を申請したときなどさまざまな場合が考えられる。中国が「台湾が独立に動いた」と判断すれば武力での統一に踏み切る恐れがある。中国の不動産バブルが崩壊し経済が混乱した時に、国外に国民の目を向けさせるために武力侵攻に踏み切る可能性も高い。習近平が4期目を窺う時、人民解放軍が創設百周年を迎える2027年あたりが危ない。
ただ、ロシア・ウクライナの場合と異なり、中国と台湾の間には台湾海峡や台湾の南北を貫く山脈、台風などの地形・気象条件が中国の行く手を阻む障害となる。とくに台湾海峡の海峡幅、海流は中国の侵攻時には大きな障壁となるだろう。それでも習近平が決断すれば中国は必ず台湾侵攻に踏み切る。その際は認知戦、情報戦、ハイブリッド戦、サイバー攻撃などでインフラを破壊、海上封鎖を行い、台湾を孤立させるなどの手段を用いることが考えられる。米艦が中国に攻撃されたとき、また台湾が米国を参戦させるために日本を巻き込み日米安保を発動させることで波及する可能性もある。その場合、貿易総額の約20%が失われるなど日本経済には深刻な影響が及ぶ。中国との取引が多い日本企業は対中リスクを回避する努力を行うべきだ。
山下氏は、尖閣諸島の位置関係図や周辺海域、中国の魚釣島に関する矛盾だらけの基本主張、台湾軍及び中国軍の兵力・配備、日本の国家安全保障会議の体制などについて言及。自身の体験も踏まえた中国の台湾侵攻のシミュレーションについて解説した。「台湾有事の際は、中国は米国の在外基地を、米国は中国本土を攻撃しない限定的な戦争となるだろう」と予想した。その後の質疑応答でも活発なやり取りが行われた。