『中国の台湾政策と台湾社会の「台湾有事」認識』
台湾という国は存在しないことが、わが国の台湾問題の議論を難しくしている。現在、中華民国を承認している国は十数カ国で、その数は減少傾向にある。二つに分かれたものを統一したい中国にとって、中華民国の承認国が減るのが望ましいかは疑問だ。そもそも台湾の世論調査では「現状維持」「やや独立」を望む声が8割で、「統一/独立」は議論にすらなっていない。「台湾独立/統一」は北京のフレーズであることを日本のメディアは理解していないのだ。台湾の政党支持率は、民進党が30%、国民党が15%程度に過ぎず、半数が無党派層。無党派層をどれだけ取り込めるかが勝負だ。台湾統一は中国共産党の悲願で、2035年までに習近平は何らかの成果をあげたい。中国の力を誇示し、経済制裁やフェイクニュースを用いて台湾の人々の認識に影響を与えるグレーゾーン作戦、ネットケーブル切断で台湾軍を孤立させるなど、あらゆる手段で台湾に圧力をかけ続けるだろう。