山本善心の週刊「木曜コラム」 今週のテーマ     新生民主党の棘(とげ)

2010年09月22日

9月14日民主党代表選は、菅直人首相が大方の予想をはるかに上回る得票差で小沢一郎前幹事長を破った。しかし、新内閣は小沢グループを排除した組閣となり、挙党態勢は早くも崩れ去った。菅改造内閣は仙谷由人官房長官の独裁と霞が関官僚の狭間で政局運営の混乱を収拾できなくなることが早くも懸念されている。

 今、菅政権は各紙平均60%以上の高い評価であるが、実際は実績無き高支持率だ。強いて挙げれば、日韓併合条約100年での「菅談話」や、仙谷氏が目論む個人補償問題等イデオロギー的政治運動への執念が感じられたことくらいだ。日韓の世論はいまや過去の歴史問題より未来思考に転換すべきとの声が強まりつつある。仙谷氏が謝罪と個人補償の請求権に執念を燃やす背景には巨大な利権があるからだとみられている。

 民主党支援団体の労組は、革マル、革労協、中革、赤軍派系統など名だたる左翼の過激派勢力の巣窟とも言われている。彼らは、わが国の歴史・伝統・文化を破壊し、治安を脅かす存在だ。菅内閣は仙谷官房長官のコントロール下にあり、仙谷氏は法制局や内閣官房にも影響力を持ち、水面下で彼らと接触しながら党内で睨みをきかせていると聞く。

政策不在は許されない

 菅内閣は就任早々、国民感情を逆なでするような消費税増税を安易に発言し、参院選で敗北の一因をつくった。その後、菅内閣は山積する政治問題を切り抜けるため「雇用」を連呼したが、具体的な理念や政策が示されないことに疑問を呈する有権者も多い。いまや経済はデフレ、株の下落、深刻な円高、不況による就職難など問題は山積し、普天間問題も何ら手つかずの状態にある。

 企業では無能な経営者はたとえ3カ月でも退陣を余儀なくされるのが常識だ。菅首相の支持グループは「首相をコロコロ変えるのはよくない」としている。しかし、首相の適性を欠いた指導力が現職に留まり続ければ、国益の損失は計り知れない。菅内閣の誕生は、小沢潰しの霞が関プランに国民がまんまと乗せられたとの見方もある。

革マル派と民主党

 菅首相の思想的な原点はどこにあるのか。菅氏は市民運動家の市川房枝氏のもとで市民活動を始め、1960~1970年代に活躍した政治学者松下圭一氏が広めた「市民自治」理論を政治理念の原点にしている。この理論には国家を前提としない「新しい公共」や「地域主権」がやたらに出てくるが、これを実行に移すのは左翼の「プロ市民」とされ、「地域主権」とは「国家解体」が本質的な目的とする危険な論理だ。

 JR総連やJR東労組内には、革マル派活動家らが深く浸透している。鳩山前首相は5月11日政府答弁で「JR総連とJR東日本労組は共産主義革命を起こすことを究極の目的とする極左暴力集団であり、革マル派活動家が相当、組合に蔓延していると認識している」と答弁した。

 この恐るべき革マル派の本丸とされるJR東労組から民主党の田城郁氏が参院比例代表で14位に当選した。それどころか民主党幹事長の枝野幸男氏は1996年の衆院選でJR東労組に対して「私はJR総連などJR東労組の掲げる綱領(活動方針)を理解し、連帯して活動します」と覚書に署名し、献金を受けた。
 
民主党は労組の政党

 民主党の大票田は労働組合票が中心で、参院選比例代表16人のうち10人は労働組合の出身者である。たとえば前経産相の直嶋正行氏は自動車労連出身で、組合の推薦を受けて当選している。

 川端達夫氏が高校授業料無償化の対象に朝鮮学校を加える方針に賛成したのも支援を受けたUIゼンセン同盟の方針だ。労組から票と資金を受けている議員はその組合の方針に忠実に従うことが議員としての使命である。

 参院選の比例代表選の候補として労組の支援を受けて当選したのは以下の10名である。
石橋通宏(情報労連)、江崎孝(自治労)、加藤敏幸(連合)、小林正夫(電力総連)、田城郁(JR総連)、津田弥太郎(機械金属産業関連労組)、直嶋正行(自動車総連)、邦谷屋正義(日教組)、難波奨二(JR総連)、柳澤光美(UIゼンセン同盟)。

 民主党参院比例区はこれら労働組合の推薦、支持によって当選した議員が多数を占めている。民主党議員は国会議員のみならず、25人のうち10人が旧社会党出身の過激な思想、イデオロギーを持つ職員とされている。彼らは仙谷官房長官のもと内閣官房専門調査室(国家公務員・一般職・非常勤)に任命され、官邸や各省庁に入り政府中枢の中心的存在として活躍している。

政権中枢に入り込む左翼集団

 自治労出身の仙谷官房長官主導のもと、いまや共産党、旧社会党系の過激派職員によって民主党は革命の拠点になりつつあるとの声が出始めている。彼らを支えるのは680万人の組合員を擁する連合(日本労働組合総連合会)は、選挙があるたびにビラまき、電話かけをはじめ、票と資金を大量に提供し、民主党議員をバックアップしてきた。今回代表選の土壇場で議員数が菅氏側に流れたのも水面下で連合労組の一部が動いたとの声もある。

 また、マスメディアや省庁、学識者、文化人らも利害を共有する関係にあり、連合労組を敵に回すことはできない。いまや連合の勢力は民主党を牛耳り、連合に有利な政策を押し付け、わが国を左翼連合労組の天国に塗り替えるとの声も出始めている。弊誌では彼らの存在や動き、狙いについて機会あるごとに意見を述べてきたが、今後連合内の左翼暴力集団と政治家の結びつき等、必要に応じて明らかにしたいと思う。

小沢一郎を忌み嫌う仙谷由人

 菅首相を操る仙谷氏は結党以来の民主党議員であり、小沢氏率いる自由党が民主党と合併する際、仙谷氏だけは執拗に反対したとされる。小沢氏は民主党入党以来、横路議長、輿石東氏らの左派グループに手を突っ込み、左傾化したと囁かれたが、嗅覚の鋭い仙谷氏は仮の姿勢と冷ややかに見ていた。

 仙谷氏は党内で反小沢の姿勢を鮮明にし、枝野氏や岡田克也氏らを上手に使い、反小沢の立場を明らかにした。彼らは鳩山政権が終わりを迎える頃、一気に菅氏を持ち上げて首相に誘導した。彼らの狙いは政治的イデオロギーにあり、政治闘争に尽きる。

 先にも述べたとおり、革マル派をはじめ、反国家主義者たちは有力省庁の官僚として配置されている。霞が関とは密接な関係にある仙谷氏らは扱いやすい菅主導によって、党内で自らの影響力を強めることにこだわりを示している。

挙党態勢、トロイカ体制はあり得ない

 鳩山前首相らは代表選の激突は避けたいと考え、菅・小沢・鳩山3氏による和解と「トロイカ体制」による挙党態勢を訴えた。しかし、これには菅氏側の仙谷氏らが猛反対した。トロイカ体制になれば菅氏は小沢氏側に傾き、仙谷、枝野氏らは党内権力を失うことになると考えて当然のことだ。共産主義体制とは一党独裁であり、挙党一致という概念はあり得ない。

 代表選で菅政権が再び誕生したが、新内閣の総指揮官は仙谷氏である。仙谷氏は脱小沢色を鮮明にし、小沢派の閣僚起用はゼロで、副大臣・政務官は48名中議員15名が起用された。さらに検査審査会で「起訴相当」となれば、小沢氏の離党勧告もあり得よう。

 小沢前幹事長は選挙の名人と言われてきた。負ける選挙には出馬しない。しかも、今では150名の小沢グループに成長している。小沢派は結束が固いので、代表選では他グループを加えれば250議席以上は固いと見られていた。地方議員票、党員、国籍を問わないサポーター票は小沢幹事長時代に作られたものだ。一方、菅・仙谷陣営は選挙には全くの素人集団とみられていた。小沢氏は民主党に合流して以来、左に手を突っ込み、幹事長経験を積み重ね、政治は数の力と標榜しながら、このような無様な結果をもたらしている。

あてにならない派閥

 菅首相は民主党のマニフェストや公約を修正しようとしている。それどころか政治主導を止めて就任早々財務省に取り込まれてしまった。さらに大先輩の小沢氏に対して「しばらく静かにしていたほうがいい」と非礼な発言を行い、口では挙党態勢と言いながら、言動は小沢グル―プの感情を逆なでするなど、裏表のある発言に信用できないとみられている。

 「政治とカネ」は小沢氏の専売特許ではない。実際のところ、連合から票や献金を受けている議員たちはもっと陰湿で性質が悪い。民主党はいまや連合労組の支援を受けないと当選できない体質に変わりつつあり、旧社会党時代に向かって、まっしぐらに舞い戻ったとの感は否めない。
 
次回は9月30日(木)