今や、尖閣問題は中国内のデモに発展している。これらは中国政府への人民の不満が爆発したことが要因と見られる。わが国が尖閣諸島の領有権で主張すべき根拠は以下の通りである。
尖閣諸島は1895(明治28)年、明治政府が現地調査を行い、清国の支配が及んでいないことを確認して沖縄県に編入した。これに対し、清国側から異議がなく、わが国固有の領土として国際的にも認められている。1959年の中国発行地図、ならびに1953年1月8日付人民日報の記事に「琉球群島には尖閣が含まれる」とあった。つまり、中国が1971年に突如領有権を求める以前は、尖閣諸島を日本領土と認めていた証左である。
これまで尖閣が中国領土であったとする記録と根拠はなく、中国が突如言い出したお決まりのコースに他ならない。わが国政府が領海内の外国漁船の違法操業に立入検査を行い厳正に取り締まることは当然の行為であり、違反者を勾留することは法治国家として当然の義務と責任である。
対日制裁始まる
問題は、尖閣の歴史的経緯や主張がわが国から中国側に発信されず、菅政権になって領土や領海の国家主権を守ろうとするリーダーシップが見えないことだ。このように、わが国が自己主張できず先送りを繰り返す度に中国は次から次へとさらなる手を打ち始めた。
一方、中国の温家宝首相はニューヨークで船長の即時無条件釈放を強硬に求めたうえ、わが国に経済圧力や制裁を加える手段に出た。中国人観光客の訪日中止、日本向けのレアアース(希土類)の輸出停止等、中国経済に依存する日本経済の弱みを巧みに突いて来る。しかも、中国メディアはわが国の巡視船が中国漁船に衝突し、船長を不法勾留したと全く逆の報道を繰り返した。中国インターネットの書き込みは反日批判と船長を英雄視する論調が盛り上がりを見せている。
こうした反日世論の盛り上がりを背景に、温家宝首相はニューヨークの大舞台で世界に向けて「尖閣諸島は中国固有の領土だ」などとの文言を繰り返した。中国は最初から「嘘」を本当であるかのように誇大宣伝して来たが、全く根拠となる説明がない。それに対して、わが国は反論しないばかりか、ビデオの再放映さえ中止している。これは中国側への配慮と圧力に屈した外交失態であり、対中敗北外交だ。
理不尽な要請
中国は尖閣問題を「主権問題」ととらえ、一歩も譲らない方針だ。中国の戦術は、相手が一度譲歩するとさらにギリギリまで譲歩を迫る。わが国は中国人船長の釈放で、今後の対中外交に重大な禍根を残した。中国は軍事的な威嚇と経済的圧力を加えてわが国を脅せば必ず落ちると確信していよう。
今回わが国は周辺諸国からの期待を裏切っただけでなく、国際的な信用も失った。一方、中国は、今回の対日勝利に自信を得て南シナ海にも権益確保が容易となる道を拓きつつある。そこで米軍の登場が具体化されるようになった。
さらに中国は、わが国に今回の事件に対する謝罪と反省を求めると、強硬姿勢を強めている。菅首相は低い声で「応じるつもりはありません」と答えたが、この問題に利害のからまない仙谷由人氏は口を挟まなかった。次に中国が尖閣諸島への行動を起こした時は日中戦争の序奏段階と考えてもよいのではないか。
嘘という事実の演出
中国人との外交を進めるにあたり、わが国政府はもっと中国人の本質や精神構造を理解せねばならない。同じアジア人であっても中国人の価値観や生活習慣、社会通念とは、一言で言うと日本人とあまりにも違い過ぎるのだ。
中国人の性格は頑固であるが、接待上手で愛想がよく、相手の話にうなずき同意する姿勢を見せるのが上手い。一方、彼らの才能は身振り手振りでいかにも本当であるかのように説得し演出することに長けている。中国人の人付き合いのうまさは世界一だと言われるが、日米の政官民は中国外交に翻弄されている。
今回の漁船の衝突事件で中国側の発言は見え透いた「嘘」だとわが国民の大勢はそう思っている。しかし、どのような嘘をつこうが、中国人の天才的な演出と表現力で世界の世論に訴えれば「何事も本当」に見えてくる。中国では、わが国が得意とする「大人の対応」は弱腰外交でしかなく、おとなしく出ればさらに圧力を加えて来よう。わが国の政治家と官僚は中国の威嚇に恐れおののいている。
中国人の嘘はゲームと心得よ
中国にとって嘘と外交圧力は金儲けと生活の手段であり、悪いと反省したり謝罪する考えも習慣もない。中国人の交渉術とは、いかにうまく嘘をつき通すかが価値基準である。中国語には感謝、憎悪、軽蔑という言葉がない。それゆえ中国人の言動に嘘があっても誰からも咎められることはなく、本人も嘘をついたと思っていない。
上野御徒町のアメ横に二坪くらいの小さな舶来品の洋装店がある。そこの中国人女性店主は口八丁手八丁で実に面白い人物だ。店の品物もなかなかセンスのある舶来物を集めていて評判が良い。筆者はこの店主の嘘が好きで、やりとりを楽しんでいる。店主は「社長、この品は儲けなしです。嘘ではありません。私はアメ横一番の正直おばさんと言われております」と毎回同じ台詞を繰り返す。こちらも馴れたもので、相手の嘘に調子を合わせながら希望価格に誘導する。最初は6万3000円もしたセーターをしまいには2万2000円にまけてくれた。中国人の嘘という本質をよく理解したうえで交渉すると上手くいく場合がある。
尖閣発言は嘘の塊
中国人の嘘は理解すればするほど理解できるようになる。中国人は嘘が巧みで本心をぼかすのがうまい。そして、不利になると無関係な問題をまくしたて、最後はことわざなどを強引に持ってきて辻褄合わせを行う。中国人から見れば、日本人は本当に正直者で、まじめ人間だからで面白くないと思っていよう。
今回の尖閣諸島問題に際して温家宝首相がとった態度は中国人の本質をそのまま表している。つまり、嘘のオンパレードであり、根拠と事実もない領土問題があたかも中国の領土であるかのような錯角を起こさせる演技は圧巻だ。たとえば、南京大虐殺事件やその記念館の展示は当時の事実とは全く異なっているが、中国では事実と根拠が問題ではなく、いかに嘘をうまく表現するかとの発想が重要であり、それゆえ驚くべき歴史観が飛び出すので面白い。
逆に中国人らしさの嘘という現実を理解しないわが国政府のちぐはぐな対応が問題を引き起こしている。わが国は日中間に事件が起こるたびに中国側の嘘に翻弄され続けてきた。このような事態を回避するため、わが国政府や外務省が中国そのものの本質に学ぶゼミナールが肝要である。
政治主導の弊害
中国流の嘘を一度相手にすると、どこまでも続くのでキリがない。中国人との付き合いは事件が起こるたびに嘘がエスカレートする。嘘を隠すために新しい嘘を持ち出してくる中国人を相手にするには菅首相や仙谷官房長官レベルでは、いくら知恵を絞っても勝てる相手ではない。
民主党政権が誕生したのは「政治主導」を掲げたからである。若い政治家らが官僚の言いなりにならぬと格好つけるのもよいが、経験も能力もないから最後は官僚に頼らざるをえない。菅内閣になって何をしたかと問われれば、日韓併合100年に際して村山談話よりさらに踏み込んだ謝罪と反省であり、今回の中国船長釈放に見る中国への従属であり、いずれも国益を著しく損なう結果でしかなかった。
これが「政治主導」の実態であり、ましてや、今回の尖閣事件ではわが国の主張を述べる訳でもなく、中国人の嘘とでたらめを戒める主張を世界に発信することすらできなかった。
中国の怖さを知る
中国人は人類史上まれに見る演出家であり、どんな立場に立っても見事な嘘を演じきることのできる大スターである。その点、日本人は国際舞台ではまともに演じることさえできない大根役者だ。わが国の大根役者はただまじめであることを美徳として生きてきた。かつて、わが国の満州開拓団は長春など素晴らしい都市をつくりあげている。それがあって、満州人の大勢は親日的でありわが国に感謝する人々が多い。
しかしながら、中国は「日本軍満州侵攻で中国人虐殺」などと反日プロパガンダを煽動。この場合は後ろに旧ソ連が一枚噛んでいた。満州の近代化に貢献した日本軍に対して中国人は恩を仇で返している。
中国人には感謝とか誠意という言葉がない。それゆえ他人からの善意に対して突然君子豹変する。恩を仇で返すことは中国人の得意技だ。わが国の政治家は中国の本質に学び、中国を理解し、結局は深入りしないことである。今回の事件でわが国の大使館員たるものが「中国の怖さを改めて知った」では話にもならない。
次回は10月28日(木)です。