山本善心の週刊「木曜コラム」 今週のテーマ   政官民の知恵を総結集せよ

2011年06月23日

政治・経済・外交のみならず、東日本大震災後の具体的な実績すら見えない菅政権に、国政は任せられないと与野党は退陣を求めている。印象に残る政策といえば子ども手当をはじめ、ばら撒き4Kと消費税増税策など国潰しの政策だ。

しかし、財務省主導の消費税増税が実施されれば、すでに80%以上が実質的な赤字に陥っている中小企業に深刻な打撃を与えよう。菅首相は国民に繁栄と幸福をもたらす政策は、はなから念頭になく、自らの延命策しか頭にないようだ。

現今、全国の税務署内は消費税が払えない中小企業が言い訳に列をなし、経営が四苦八苦するなかで懸命に雇用を支えている。いま、一番苦しい局面にある中小企業を国が下支えもせず、増税で中小企業にとどめを刺すなら、菅政権で日本経済は奈落の底だ。

大企業にも及ぶ戦略見直し

財務省はこれまで税収不足を中小企業に押し付けてきた。日本国内の円高、法人税率、増税などである。さらに大震災による電力不足など国内の生産環境の悪化に追い打ちをかけたのが、放射能問題であった。厚労省によると、大震災で東北三県の失業者は10万人を軽く超えると発表。このまま放置すれば、想像を絶する苦境に追い込まれないか心配である。

一方、大企業は戦略の建て直しに必死だ。たとえば、パナソニックは国内従業員1万数千人規模の削減を発表した。自動車工場では夏場の一時休業、

コスト安の海外移転などが検討に入っている。大企業は生産調整のため、今後人材カットを余儀なくされ、下請け、孫請けも含めて雇用の削減が加速されよう。

国民の窮状を報道しないメディアに注がれる厳しい目

現今の経済状況、中小企業の苦しい実情がマスメディアから報じられていない。国民の大勢は国家存亡の危機にあって、国民の苦境を報じない報道に不満の声が噴き出している。このままでは新聞の使命が問われよう。それに応えて新聞もこのままではいけないと、様々な意見が社内で飛び交っていると聞く。今回の大震災を転機に「国民の新聞報道に対する目が厳しくなった」と長谷川幸洋氏(東京新聞論説副主幹)は、6月弊会東京例会で語る。

たとえば、中小零細の中でも国際競争力のある企業はよい。彼らは勝ち組だ。勝ち組の条件は世界経済の変化に敏感であり、グローバルな視野で企業の体質改善、意識改革を積み重ねてきた。企業はトップの能力として情報力、分析力、知的ビジネスを重視せずして生き残れない。

国民の声を反映する有識者会議を

これまで政府は民間の声を政治に反映させるため、民間の有識者を招いて有識者会議が行われてきた。今後もあらゆる分野で民間の知恵を吸収する会議が必要とされよう。しかし、これまで選ばれた有識者らはエリートばかりで、現場の厳しい状況を把握し理解できる人が少なかった。それのみか政治的な意図で選ばれた単なる形式上の会議では役立たずだ。

とくに東日本大震災の処理は、日本経済の安全保障政策に打撃と警告を与えた。そればかりか日本経済の深刻な落ち込みは放置され、東日本大震災の影に掻き消されている。民主党は政治主導で世論の支持を受け入れてきたが、民間の苦しみや期待に応えていない。あらゆる会議も政権側の意向に従う御用委員ばかりでは国民の声は届くまい。

この国難を打開するため、今こそ、政官学、民間、マスコミ代表が参加して、彼らの知恵と情報を総結集する日本改革会議を構築すべきだ。「日本の改革」は知恵と情報の収集であり、最適な体制に向けた仕組みとシステムを構築すべきだと思う。

不可解な浜岡原発停止宣言

5月14日、菅首相は突然浜岡原発の全炉停止を指示した。なぜ突然首相は原発停止に踏み切ったのか、との真相を究明すべきだ。今回の停止騒動では何の説明もされず、近々地震が起こるが決まり文句だ。日本全体のエネルギーをどうして保つのか。東海地域が風力発電や太陽光発電だけで電力量を確保できるのか。説明が足りない。

浜岡の御前崎で獲れる金目鯛は全国ブランドになっている。静岡はお茶の名産地であるが、荒茶の放射線量が問題だと言う。しかしそんな事より福島原発と違って浜岡原発は西風が吹く。これは横須賀の米軍基地を直撃するとして、米国側の反対があると言う者がいる。つまり、米国側の強い要請で中止になったというわけだ。

浜岡原発の停止は経済産業省が発表する予定であった。しかし菅首相は自らの手柄としたいため、突然発表したとは側近筋の話だ。浜岡原発の停止理由は東海地震が起こるからと説明している。しかし、東海地震は30年以上前から10年以内に起こると何度も繰り返されてきたのに、今更との感もある。

東日本大震災以降、菅首相は果たして何をやったのかと問われても答えようがない。がれきの山はいまだに撤去されず、避難住民は10万人に達する中、被災地の復旧も仮設住宅建設も掛け声ばかりで対応が遅れている。民主党担当議員らは、官邸、原子力安全委員会、東電がバラバラで意思統一もできていないので政治は彼らの調整役だと言う。

菅首相はつくづく運のよい人だと思う。米軍普天間飛行場の移設で米国から決断を迫られると東日本大震災が起こり、問題は先送りされた。3月11日、外国人違法献金受領で大問題になると大震災が起こって免れた。

原子力政策で幕を開けたG8であるが、各国は菅首相の発言に注目した。しかし、原発は汚染水を垂れ流し放射能拡散が止まらず、事故対応が不十分だと各国は懸念を示した。しかし、G8の会場で菅首相が再生可能なエネルギー重視戦略を振りまく演説に、各国から不審と冷たい視線が向けられた。菅首相のもとで二転三転する原発事故への対応や、情報開示の不手際を知り、各国首脳らも驚き呆れたとの声が漏れ伝わる。

小沢潰し、党内抗争の行方

民主党政権は小沢一郎幹事長の時代、地方からの陳情は政治家が引き受けると公言した。これに危機感を持った霞ヶ関が小沢潰しを敢行する。これが土地問題をめぐる政治とカネ問題であり、小沢イメージは地に堕ちた。それに輪をかけた菅・仙谷氏の小沢斬り、小沢潰しが党内抗争を呼び、政治の政策や理念を放置した暴挙に政治不信は満開だ。

小沢グループは衆参120名と言われている。あらゆる策をめぐらせても、小沢グループをバラバラに解体しない限り、仙谷氏らは党内抗争を収束できない。いまや、菅・仙谷グループ、中間派、小沢グループの3つの勢力が拮抗している。仙谷氏の思いとは別に今後小沢グループは無視できない存在だ。

問責決議を受け、謹慎中の身である仙谷氏が再び官房副長官に舞い戻り、政局を引っ掻き回している。これまで仙谷官房副長官がどんな仕事をしたのかと問われても具体的に何もなく、あるとすれば小沢斬りのシナリオライターくらいのものだ。氏の政治活動は常に反小沢であり、小沢斬りでしかなかった。民主党は党内紛争を繰り返しているうちに、政府無策でメルトダウン寸前だ。

小沢氏には新生党、自由党時代から蓄積されてきた政党助成金がある。これはいざとなれば大きな資金源になる。さらに鳩山由紀夫氏側も驚くべき大金が眠っている金持ちだ。今後の政局は小沢・鳩山の資金とグループ員数が仙谷氏らの大きな壁となろう。

次世代に向けた新たな枠組み構築を

わが国経済は20年前からグローバル化の荒波を受け、経済成長を促す経済政策や新産業の創出など改革が遅れ、徐々に活力を失いつつある。これらのピンチから脱出するために、国は国の方向性を打ち出す必要がある。

わが国は次の時代に向けた産業文明の確立に挑戦すべきだ。まずグローバルガバナンスを定着させ、わが民族ならではのヒューマニズムに立脚したビジネスモデルの構築を急ぐ必要がある。同時に政治的には憲法を議論する有識者会議、日米関係の強固な体制、東アジアの安全保障、連帯強化を定着させる政治力が問われよう。

わが国を新しく変えるには政治家と民間人が会議する場が必要である。弊会には政治と経済、学者とメディアが集まる「政民合同會議」があり、「日台アジア会議」がある。あらゆる枠組みを越え、互いに知恵を出し合い、新しい日本改革にみんなが力を合わせることで、新しい流れが見えてこよう。

次回は6月30日(木)です。