台湾有事は中台だけの問題ではなく各国の思惑が絡んでいる。先ごろロシアのプーチン大統領は24年ぶりに訪朝し、有事に相互支援する「包括的戦略パートナーシップ条約」に署名した。ウクライナ侵攻で苦しい立場にあるロシアは北朝鮮に支援を求める代わりに、エネルギー、食糧で支援するもので、北朝鮮にとってはロシアの軍事協力を得るとともに対中外交で距離をとる姿勢を示すものとなった。訪朝が過大に扱われないようプーチン大統領はベトナムも訪問し、韓国への配慮も行った。
プーチン大統領は5月には訪中、緊密な中ロ関係をアピールし、米国主導の国際秩序を中ロが変えていくという強い姿勢を示した。中ロの協力は主に戦略的原子力潜水艦とみられる。米国を抑止ししたい中国は弾道ミサイルを発射できる戦略原子力潜水艦の開発、実験を強化し、台湾周辺で大規模な軍事演習を繰り返している。また、台湾の頼清徳政権を台湾独立派と見なして恫喝を激化。しかし、中国は軍事演習では実際には台湾の領海には入らず、実弾も使用していない。
中国は台湾への圧力を強化していると印象づけたいが、本当に警戒しているのは米国。米国が台湾独立を煽っていることが中台情勢を悪化させていると考えており、台湾の米国離れを促すための圧力だ。現時点では、習近平総書記は人民解放軍を十分に信用しておらず、ロケット軍、戦略支援部隊の軍人の粛清を進めており、遂行能力に欠けるため、近い将来の武力行使は困難な状況。しかし、将来的には急速に近代化する武器装備品を使いこなして戦闘ができる強力な軍隊となる可能性がある。中国は共産党の権威を保つためにも国内外に「対台湾軍事圧力」をアピールする必要があるが、現時点では、「平和的統一」を追求する可能性が高い。ただし、「平和的」解決には、軍事的圧力や限定的な軍事作戦が含まれる場合がある。
小原氏は中国が台湾周辺で行う軍事演習や、開発を強化している戦略的原子力潜水艦、サンゴ礁を巡るフィリピンとの衝突、習近平総書記の推し進める人民解放軍トップの粛清などについて詳細に解説した。