8月26日「アジア安保会議」講師/海野 素央 明治大学政治経済学部教授

2024年08月26日
  

ハリスはトランプに勝てるのか!「2024年米大統領選挙」

バイデン大統領が7月21日に大統領選からの撤退を表明し、その後選挙集会にハリス副大統領は人工妊娠中絶と「自由(フリーダム)」を結びつけた強いメッセージを発信。ハリス陣営が事前にこのメッセージを準備していたことは明白だ。また、民主党大統領候補指名受諾演説において、習近平の終身独裁に憧れているとされるトランプ前大統領に対し、ハリス副大統領「米国の安全と理想を弱めることはしない」として、自分こそが民主主義のリーダーであるというメッセージを発信した。

ハリス氏は、受諾演説でトランプ氏を“自由の抑圧者”として描き、自身を“自由の擁護者”として対立構造を生み出している。ハリス陣営は、米国人にとって優先順位の高い文化的価値観である「フリーダム」と人工妊娠中絶を結びつけることによって、無党派層の女性や黒人、高学歴女性などへのアピールに成功。トランプ陣営はハリス陣営がバイデン陣営も取り込めなかった支持層を新たに獲得しつつあることに危機感を募らせている。

「強いアメリカ」をアピールするトランプ前大統領だったが、コロナ禍で風潮が変わり、寄り添う大統領としてバイデン大統領が求められた。9月10日の討論会でハリス氏は国民に寄り添う姿勢とともに、検事出身としてトランプ氏の罪を問い詰めていくことになるだろう。

“史上初の女性最高司令官”が争点になることを避けたいハリス陣営は、「未来VS過去」「自由VS恐怖」「思いやりVS憎悪」「強い中間層VS富裕層への減税」という4つの対立軸を打ち出した。

6月末のバイデン大統領とトランプ氏のテレビ討論会で民主党支持者と反トランプの無党派層は、バイデン大統領が重罪犯であるトランプ氏を攻めきれず、米最高裁がトランプ氏に免責特権を与えたことに不満を募らせている。9月の討論会でハリス氏が4つの対立軸に基づいて主張できるか、に注目だ。

2008年、2012年、2016年の大統領選で、オバマ陣営、ヒラリー・クリントン陣営とバイデン陣営で研究の一貫でボランティアとして民主党の実地調査に参加した経験を持つ海野教授は、ハリス陣営の顔ぶれやボランティアの持つ力などについて解説。直近の支持率平均値を挙げ、「トランプ氏がハリス氏を誹謗中傷している間はハリス氏に分がある」と語った。