「英国政府の優先課題と日英協力の展望」

  英国では７月にスターマー政権が発足した。14年間の野党経験を経た政権交代となったが、今回の政権は急進主義やポピュリズムの要素がない中道路線とみられる。新政権は安全と平等な機会の提供など国民に奉仕する。国内の課題解決に向けさまざまなミッションを掲げている。最重要ミッションは雇用を創出し、生産性を向上させ経済成長につなげることだ。

  英国は、AI、量子力学、半導体デザインなどの分野で欧州を牽引しており、日本など国際的なパートナーと連携してイノベーションを通じて国際社会への課題にも対処していく。気候変動問題に効果的に対処するため２０３０年までにゼロカーボン電力の実現をミッションとして掲げる。英国は開かれた社会だが、法に反する密輸組織や不法移民に対しては国境警備隊の新設を通して国境の安全を確保する。凶悪犯罪も半減させる。このほか、若者への職業訓練など教育支援、福祉支援を強化し、国民保健サービスの再構築する。

  英国内外の安全確保に向け、防衛戦略の見直しを行い、多様化する国際社会の脅威に対応できる体制の構築も目指す。EUとの関係を見直し、インド太平洋地域では引き続き日本との連携を強化していく。

  ロングボトム駐日大使は流暢な日本語で、日英の安全保障分野での協力や貿易協定についても言及。「経済安保で英国が対話を持つのはアジアで日本が初めて。かけがいのない友人としてさらに両国の関係を強化させたい」と語った。

  また、６月に天皇陛下の渡英に立ち会ったことや大阪万博にも触れ、「英王室と日本の皇室は150年以上に及ぶ長く深い交流があり、今後もあらゆるレベルで人的交流を発展させたい」と述べた。

  その後の質疑応答でEUへの復帰の可能性について質問が及ぶと「EUとの関係の再構築はあるが、再加入の可能性はない」と返答。将来の人口推移については、「少子化傾向にはあるが、英国人はワークライフバランスの要求が高く、日本ほど深刻ではない。キャリアを続けながら子育てもできる環境づくりを雇用主にサポートするよう求めている」などと語った。