「中国の世界戦略の狙いとは何か」
トランプ政権下で、オバマ政権下では巧妙にオブラートに包まれていた日米の利害の違いなど様々な側面が鮮明になるのではないか。米国はあくまでアジア太平洋地域へ触手を伸ばすために日本と同盟を結んでいるに過ぎず、日本はどのように米国と利害を一体化させていくべきか、戦略を立てて外交にあたるべきだ。
わが国は外交をその国の価値観で判断してしまう傾向にあるが、本来、外交ではやってはならないことだ。あくまで国益に沿って考えるべきであり、時と場合によっては価値観が合わない国とでも手を結ぶことがあってよい。外交はあくまで自国の利益を追求するための駆け引きであるという視点が日本には欠けている。
諸外国では国益のためならば外交方針もいさぎよく転換する。南シナ海問題は中国とベトナムの衝突が発端だったが、いまは両国の関係は改善に向かっている。古くはニクソンの訪中、最近ではTPPの英国参加しかり、世界の国々は自国の利益のためになるのであれば方針も転換することをいとわない。日本だけがいつまでも頑なに正義感を振りかざし、うまく立ち回れずにいる。正論をかざせば国際社会が味方してくれるというのは大間違いだ。また、“親日国”という言葉に惑わされ、油断してはならない。相手国がどこに利害を持っているのかよく見極めるべきだ。
中国語、中国文化に精通する富坂氏は、欧米のメディアの論調なども踏まえた上で国際社会の様々な動きを冷静に分析。その上で日本の外交の拙さ、問題点を指摘するとともに、少女像設置への対抗措置として駐韓国大使を帰国させた件についても、「カードは有効に切れなければ意味がない。日本政府には今後韓国に対してどう対応していくべきかイメージがない」と対症療法に従事する日本の外交の拙さを批判。日本のメディアが希望的観測でものを言うなか、常に最悪の事態を考慮しながら戦略を持つことの重要性を強く訴えた。このほか、南シナ海問題で追い詰められた中国で反日デモに至らなかった事実についても言及。いまや日本への旅行者、ネットで得られる情報も増え、世界からどう見られているか中国人が意識するようになったためではないか、と分析した