山本善心の週刊「木曜コラム」 今週のテーマ     世界に羽ばたけ中小企業

2011年02月10日

日本、台湾との安全保障と経済に関する情報交流機関として新たに「日台アジア会議」が発足する。これは日台の次世代に向けた若い政治家と経営者らによる日台共存共栄の関係を築いてもらいたいとする期待だ。当会議が単なる掛け声に終わらないよう、弊会ではこれまで周到な準備を重ねてきた。

戦後の経済は、すべてが成長過程であることを前提にあらゆる仕組みとシステムが機能してきた。しかし、すでにわが国の成長過程は終わり、成熟の段階にある。それゆえ、物が充足する中でこれからは物が売れない低成長の過程に入ったことを意味しよう。

それでも、わが国は世界で最も豊かな社会に成長した。しかし現今、デフレ、少子化、中小企業の不況化等により、経済は停滞を続けている。とはいえ、個人所得は中国の20倍もあり、実質的には世界の経済大国である。一方、赤字国債の発行は間もなく一千兆円に達するが、体力のあるうちに中小企業は成熟市場から脱出して成長市場に販路を開拓すべきだ。

日台アジア会議の発足

1月27日、ザ・リッツ・カールトンホテル大阪で「日台アジア会議」大阪の集いが開催された。大阪地域のアジア進出を検討している企業を中心に70余名が出席した。中小企業の若い経営者の姿も多く、台湾からは弁護士であり、化粧品会社を経営する張光佑氏が出席し、スピーチを頂戴した。

1月28日にも静岡で当会議が開催され、大方の参加者も、この企画に強い関心を示した。今後はアジア市場に進出する有力な中小企業の参画を求めたい。

筆者は席上、当アジア会議発足の趣旨と本年7月17日(日)より台北で第一回の「日台アジア会議」を開催する旨を発表。第一回会議では、日台両国から企業経営者や超党派議員も参加する予定だ。企業家らは日台企業の合弁・合作、投資による東アジア進出の可能性を模索した。また、両国の超党派議員らによって日台の安全保障問題に関わる会議が行われる予定だ。これは、自由な意見交換を行う日台の安保会議であり、今後政治に反映することを期待したい。

海外に活路を求める中小企業

わが国が直面する経済危機の中で、今後一時的な景気回復はあっても、国内は需要の喪失が加速するしかなく、新産業の創出や、海外進出に活路を求めるのも一つの選択肢ではなかろうか。

中小企業はグローバル化のチャンスを逸し、国内の不況下で、なすすべもなく無気力な状態に陥っている。大企業はグローバル化し、国内の売上減を海外の成長市場で補填し、バブル期以上の売上と好成長をもたらしている。中小企業はこの危機から脱出するため成長市場に進出する意思と勇気が問われていよう。

現今、わが国政治の機能不全と官の制度疲労が叫ばれているにもかかわらず国家を誘導する先導役がいない。会社の経営でもリーダーシップなき企業に成長はない。国も企業も同じ理屈であり、リーダー不在では国民が路頭をさまようしかないのだ。

消費税増税は歳入減の負のスパイラルを生む

中国やアジア近隣諸国が日本に追いつき追い越せで経済成長を続ける中、わが国企業は技術の切り売りや輸出によって辛うじて生き延びている。一方、国や行政は歳入不足を補うため増税政策を強行しているが、これではますます中小企業が苦しくなるばかりだ。大企業は20年前から今日の事態を予測して税金の安い無国籍企業となり、成長市場に焦点を絞ってきた。

大企業は海外に拠点を移し、ますます国内に税金を納めなくなっている。のみならず大企業は行政から水道、電気代に至るまで特別優遇を受けてきた。わが国の権益を共有する政官財にとって持ちつ持たれつのシステムは変わらない。国は困った事態になると中小企業や弱い国民から税金をしぼり取ることで帳尻を合わせてきたが、今や限界を超えていよう。

中小企業や国民が苦しい窮状の中で、国は財源不足を消費税で賄い、企業負担を押し付ければ企業利益が削られ自己負担が増大する。もし消費税増税が現実になれば倒産と雇用喪失で、逆に歳入不足に陥ることは必至だ。

求められるリーダーシップ、アジアとの共存

政官財はどこまでいっても権益を共有する集団であり、すべてのしわ寄せを中小企業、国民に押し付けてきたが、従来からの安易な手法はこの窮状下ではもはや通用しない。これまでは、中小企業も好景気に支えられて負担に耐えて来れたが、いまや限界に達している。ここに至って一握りの勝ち組企業を除いて、大多数の企業はこの状況が続けば経営が成り立たなくなろう。

行政は国民の立場を考えない権力の濫用で不祥事が相次いでいる。たとえば検察ミスが端的に示しているように、政治の無策と合わせて行政の腐敗堕落はわが国民を奈落の底に突き落とすものだ。これは政治の理念と哲学、リーダーシップの不在である。かつて台湾で国民党の蒋経国元総統から台湾本土人の李登輝元総統に交代し、“自由と民主主義、法と人権”が機能する民主主義国家に見事変身した。

この偉業は台湾の経済発展の礎を築いた台湾人の歴史に残るものだ。しかも、李登輝氏は親日的であり、こよなく日本の伝統文化、日本人精神を高く理解する人だ。李氏は「中国を敵にするのはよくないが、他のアジア諸国と均衡のとれたバランスある外交と経済関係が必要である」と述べている。

日本企業の売り込みチャンス到来

不安と閉塞感に蝕まれているわが国だが、このまま何もしないでいいのか。アジア諸国では、わが国の投資、技術、ブランド力、ノウハウに対する期待は大きい。何といっても日本人に対する信頼度は高く、製品作りやソフトに対する評価も高い。中国も「世界の工場」から需要大国に移る過程にあり、日本の非製造業にとって売り込みのチャンスだ。

メディアの報じる中国の軍拡や経済大国ぶりは実態とは大きな違いがある。表面は立派なビルが林立しても、一歩路地裏に入れば昔とあまり変わらない貧国の風景が広がる。しかも、精神病患者が多く、環境汚染物質を垂れ流し、深刻な環境問題が山積している。メディアは中国の現状を過大評価している側面が多いのではないか。臭いものに蓋をしている。

中国の実態はあくまでみせかけの誇大演出であり、やがてアジア新興国が力を付けてくれば中国の化けの皮は剥がれるであろう。今重要なことは、中国富裕層に対する日本製品の売り込みだ。これまで中国で中小企業が搾取されてきたが、今後は中国ビジネスで成功するための情報収集と勉強が肝要である。

中国進出には商習慣の違いを学ぶことが不可欠

今、わが国最大の貿易輸出国は米国を抜いて中国となった。当会議では、中小企業がアジアで成功するためのノウハウ、知識の情報提供が必要と考えている。中小企業が中国進出で数々の失敗を重ねてきたのは、中国人の本質、中国ビジネスのやり方、中国の法、会計制度など商習慣の違いに無知であった所以であり、想定外の事態が続出したためである。

中国ビジネスは嘘から始まり、嘘で終わるのは中国人の本質だ。その本質はカネ次第でどうにでもなる。技術のある中小企業に中国側は留学生を企業に派遣し、資金まで貸すと言って入り込んでくる。中国企業家の目的は技術をタダでもらうという発想にあることを知らず、人のよし悪しで判断する日本人経営者の無知と警戒心の欠如が悲劇を招く根源となっている。

中小企業が世界を舞台に活躍する時代に

今、わが国最大の貿易輸出国は米国を抜いて中国となった。当会議は、中国進出企業に必要な情報と知識を提供できるグループであると自負している。世界がグローバル化する中で、わが国中小企業にとって台湾は、親日的であり、アジアで「自由と民主主義、人権と法治」という同じ価値観を共有する関係である。

アジア新興国とのビジネスを行うにあたり、台湾ならびにアジアで成功した人の実体験や失敗談などを聞く情報交流会、台湾企業のパートナーと提携できる交流会を開催する。さらに現地情報、経済情報、民族問題、政治状況、歴史などの研究会を行う。法律、会計、コンサル等、専門家による専門的なアドバイスは必要不可欠だ。

高い技術と品質を誇るわが国の中小企業は、海外進出を通じてアジア経済の牽引役、アジア市場の主役となるべきだ。それには政治と経済が一体となって中小企業から多くのアジアビジネスを創出する時代を迎えていよう。

次回は2月17日(木)です。