「米朝関係の行方」
「トランプ政権が掲げる“アメリカファースト”はアメリカの国益だけでなく、世界の秩序を大きく損ねる考えだ。わが国にとって米国は確かに同盟国ではあるが、米国と対外政策を一体化していくわけではないことを政府は肝に銘じるべきだ。長期政権であった中曽根、小泉政権時、日米関係はとくには緊密だったが、緊密になること自体が目的ではなく、あくまでわが国が西側の一員であることを世界に証明し、わが国の国益を担保するのが目的であった。対中関係においては、米国の対中関係に振り回されることなく、わが国は日米安保体制の強化、豪州、インド、東南アジアとの安全保障協力関係の拡大と共に近隣諸国との関係を改善していかねばならない。安全保障で妥協の余地はないが、近隣諸国であり、相互に経済依存性も高い中国との関係は、日中国交正常化締結45周年、来年の日中平和友好条約40周年も見据え、広い視野を持って信頼醸成に努めるべきだ。
TPPは旗振り役の米国が離脱を表明したが、日本は時間をかけても将来的に米国が加われるよう説得をしていく必要がある。11カ国間の協定条文の修正含め、これは日本にしかできないことであろう。RCEP(東アジア地域包括的経済連携)についても日中韓、日本/EUというメガ自由貿易協定を積極的に進めていくことで米国への説得材料になる。
朝鮮半島については金正恩体制の下、度重なる核実験、ミサイル発射実験など、行動が先鋭化していることは間違いなく、いままで以上に日中米韓の連携が不可欠だ。朝鮮半島で戦争が起これば日本にとって大きなダメージとなる。度重なるミサイル発射は中国にとっても明らかに重荷である現状で、金体制が崩壊することが必ずしも中国にとって不利益でない現状を中国に認識させることで中国が本気になって北朝鮮と対峙する状況をつくり、わが国にとって好ましい結果を得ることが真の外交戦略であろう。
田中氏は、このほか、欧州各国で極右勢力が台頭する傾向を危惧するとともに、露がEUの弱体化を望んでいるともとれる現状について言及。「欧州が反EUで揺れるなか、トランプ政権の予測可能性のなさを踏まえ、日本外交上で役割を果たしていくべき」とし、日本国内での建設的な議論の必要性を強く訴えた。