「米中貿易戦争の本質と行方-日本はG2の時代にどう向き合うか」
米中貿易戦争の本質は従来の覇権国家と新興国家がぶつかりあう『トゥキディデスの罠』だ。これまで旧ソ連や日本が新興国として米国の国力の6割程度になった時点で、米国は難癖をつけて追い落としにかかってきた。中国は米国を刺激しないようベルリンの壁崩壊前後以降3回にわたってこの危機を回避してうまく時間を稼ぎ、2017年末になってようやく米国は中国を抑え込むのに10年しかないと気づかされることになる。
2018年に中国のGDPはドルベースで米国の67%になり、世銀が使う購買力平価の評価では120%に達し、米国はムキになって抵抗している状況といえる。以来、米国政府は中露を主要な競争相手と位置づけ、「大国間競争」をテロ対策に優先する方針を明確にした。
中国はこれまで防戦一方だったが、今年5月以降、持久戦に持ち込む戦略を決定。トランプ大統領が来年の大統領選での再選を最優先しており、貿易戦争による米国の影響が予想より大きいこと、中国からの輸入に短期的には代替案がないことを考慮して、貿易戦争は米国にとって不利であり、中国は我慢できると判断したのだ。その間にこれまで弱点とされていた戦闘機のエンジン開発や半導体チップなど国内の技術開発を加速させる狙いもある。中国政府は今後、米国の決定に対抗しながら交渉し、交渉には喜んで応じるが、道理と節度をもって覇権主義に対処することになろう。
米中貿易戦争は、米国の執拗な揺さぶりに中国が屈すのか、9・11のような予想外の大事件で休戦となるか、あるいは中国が米国に追いつき、G2となるのか、様々なシナリオが考えられるが、いずれにせよ両国の全面戦争は今後5年から10年近く続くであろう。
G2の時代になった場合に備えて、日本も長期的外交戦略を見直すことが不可欠。先入観なしに中国の現状を把握し、中国国内の経済と社会の転換をチャンスと捉え、一帯一路、AIIBに対してもwin―winの関係を構築すべきだ。
朱氏は、このほか、香港問題に対して、「一国二制度の矛盾が露呈しており、簡単には解決しそうもない。香港理工大学の攻防戦はかつての東大安田講堂事件を彷彿とさせる」とし、背後に米中争いの影響があることを指摘した。