「政民合同會議」2021年2月12日 講師/三浦 瑠麗 国際政治学者・シンクタンク・株式会社山猫総合研究所 代表

2021年02月12日
  

   「日本の分断」

 経済成長の停滞から先進国の政治に閉塞感が漂っている。日本よりも欧州において顕著であり、先の米国の大統領選では“分断”という言葉がクローズアップされた。

  2019年参院選で有権者の投票に最も影響したのは安保・憲法に関わるイデオロギーであった。
自民党は各国の保守政党とは異なり階級政党ではない。自民党は憲法と安全保障でリアリズムを取りたいと考える有権者によって支持され、憲法と安全保障で得をしている政党ともいえる。成長重視の人は自民党に投票しがちだが、経済や社会保障分野での政策志向は、投票行動にそれほど大きな影響を与えない。代わりがないから投票している傾向で、ほかの政党は明確な政策思想を持っていなければ勝ち目はない。

 中韓に対する認識、自由貿易、外国人受け入れ、女性問題など多くの問題で日本人の価値観には党派を超えたコンセンサスが存在する。また、有権者の中には強いエリート不信が存在し、不信の要素は自民党への投票にマイナスに影響する。構造改革疲れに関するメディア報道は必ずしも真実ではなく、世論の実態との間にはギャップがある。改革期待や破壊願望も党派を超えて一定程度存在。政権交代は政治の分断を憲法・左右対立ではなく、改革期待によって定義することで初めて実現する。世代交代によって保守も介入的保守も減少。若年層は年長世代よりも日米同盟にアレルギーがないだけで保守化はしておらず、必ずしも自民党を支持しているわけではない。

 三浦氏は「政治が変わるかは、改革への期待と破壊願望がどういう層に共有されているかの分析が欠かせない」などとして、主宰する山猫総合研究所で18歳以上の男女2060人を対象にインターネットパネルを利用して安全保障、憲法、経済政策、社会政策のほか、それらに分類しにくい総合的な価値観について独自の価値観調査を実施。個々の政策判断や投票行動について分析し、日本人の価値観の平均値と自民党への投票に影響する度合いについて様々な角度から解説した。その後の質疑応答でも活発なやりとりが行われた。