昨年、民進党は当初統一地方選で有利な条件があったにもかかわらず大敗し、結果を受けて蔡英文は党主席を辞任した。蔡政権のコロナ対策はうまくいったが、コロナによる中小企業や小市民の生活への打撃は大きく、景気が冷え込むなかでの選挙となり、多くの民進党支持者が投票しなかったことが主な要因だ。しかし、この統一地方選の結果が台湾の中国傾斜を意味するものではなく、民進党が敗北により膿を出し切ったことで2024年の総統選は国民党と互角の勝負になるのではないか。
コロナ下の3年で人的交流が減り、よくも悪くも台湾の中国依存は減った。中国の香港弾圧、人権軽視のコロナ対策を目の当たりにしたことで、台湾では自身のアイデンティティを「中国人ではなく台湾人」と考える割合が増えた。習近平が第20回党大会で「(台湾への)武力行使の放棄を決して約束しない」と明言したことで、世界中が台湾をサポートする方向に進んでいる。米は支援継続を表明し、欧州の関与も増大。2024年の総統選挙は、結果がどう転んでも「台湾優先路線」の結果となるだろう。
松田氏は、中国が台湾に仕掛けている認知戦などについても詳細に解説した。次期総統選に向けた主要3党の顔ぶれ、米中介入の可能性についても言及し、「米高官の訪台、台湾高官の訪米により、中国が軍事演習など強い反応を見せれば、民進党に有利に働くだろう」と予想。また、さまざまなシナリオを提示し、「民進党勝利なら明確な対中対抗路線継続となり、国民党勝利なら部分的宥和政策が復活する可能性もある」と語った。
さらに、台湾有事回避のためには、「習近平再選後に武力行使または『強制的平和統一』に踏み切る条件を整えさせないことが重要」との見方を示した。中国の武力行使の蓋然性については、「全島占領、長期にわたる新政権による統治を考えるとコストとリスクが高すぎ、実施する蓋然性は低い。台湾は負けなければ勝てる」と語った。ただ、台湾海峡の現状維持には「安倍元首相の死で日本政府の台湾への関心は薄れている。日米台が現在の抑止力をどれだけ維持できるかにかかっている。米国の能力増強とコミットメントの確保、日米同盟の強化は不可欠で、習に『今日はやめておこう』と思わせ続けること、ポスト習近平の時期まで時間稼ぎすることが重要だ」と述べた。