9月2日「政民東京會議」講師/ジュリア ロングボトム 駐日英国大使

2024年09月02日
  

「英国政府の優先課題と日英協力の展望」

 英国では7月にスターマー政権が発足した。14年ぶりの政権交代となったが、今回の政権はポピュラリズムに走らない中道路線とされる。新政権は安全と平等な機会の提供など国民に投資すると強調。国内の課題解決に向けさまざまな政策を掲げている。最重要課題は雇用を創出し、生産性を向上させ経済成長につなげることだ。

 英国は量子力学や半導体デザインの分野で欧州を牽引しており、日本など国際的なパートナーと連携してイノベーションを通じて国際社会への課題にも対処していく。気候変動対策としては2030年までにクリーンエネルギー社会を実現させる。洋上風力発電、大規模太陽光発電などクリーンエネルギーでゼロカーボンを目指す。不法移民、密輸組織対策などの治安対策を強化し、凶悪犯罪も半減させる。このほか、若者への職業訓練など教育支援、福祉支援を強化し、国民保健サービスの再構築も検討している。

 英国内外の安全確保に向け、防衛戦略の見直しを行い、多様化する国際社会の脅威に対応できる体制の構築も目指す。EUとの関係を見直し、インド太平洋地域では引き続き日本との連携を強化し、関与していく。

 ロングボトム駐日大使は流暢な日本語で、日英の安全保障分野での協力や貿易協定についても言及。「経済安保で英国が対話を持つのはアジアで日本が初めて。スターマー政権ではかけがいのないパートナーとしてさらに両国の関係を強化させたい」と語った。

 また、6月に天皇陛下の渡英に立ち会ったことや大阪万博にも触れ、「英王室と日本の皇室は150年以上に及ぶ長く深い付き合いがあり、今後もあらゆるレベルで人的交流を発展させたい」と述べた。

 その後の質疑応答でEUへの復帰の可能性について質問が及ぶと「EUとの関係の再構築はあるが、再加入の可能性はない」と返答。将来の人口推移については、「少子化傾向にはあるが、英国人はワークライフバランスの要求が高く、日本ほど深刻ではない。キャリアを続けながら子育てもできる環境づくりを雇用主にサポートするよう求めている」などと語った。