2025年2月12日「政民東京會議」講師/田中 均 元外務審議官・日本総合研究所戦略研究所特別顧問

2025年02月12日
  

「内外情勢を斬る!」

 トランプ大統領は政権発足3週間余ですでに膨大な大統領令に署名した。多様性政策の撤廃をはじめ、世界の人道援助の4割とされる米国の対外援助を担う米国際開発局(USAID)の廃止や出生地主義の修正など、2年後の中間選挙までに様々な政策を推進していくとみられる。パリ協定、WHOからの脱退を表明し、関税を政治的武器に保護貿易化も厭わない。自由貿易の拡大、人権擁護、地球環境保護など、米国が第二次世界大戦後80年かけて構築した国際的自由秩序は崩壊しつつある。米国の相対的地位は低下し、この4年で米国内の分断はさらに深まるだろう。日本にとっても不利となる。

ロシア、中国、北朝鮮、イランが反欧米として連携することが考えられるが、日本はこの連携を阻止し、グローバルサウスの国々を米国に向けさせる役割がある。

 二期目のトランプ政権は反リベラルな政策を打ち出し、主要ポストの人選では大統領への忠誠心を重要視しているのが特徴だ。実績、能力は軽視され、すでに多くの連邦職員の離職者が出ている。

 米中関係について、バイデン政権下では「台湾有事で対立はしても衝突はさせない。中国が台湾に武力行使すれば米国は介入する」としていたが、この構図が変わる可能性が高い。政権内には対中強硬派が多く、トランプは貿易不均衡解消を重視し、関税を交渉材料としている。中国が経済成長、共産党体制維持のために交渉に応じ、ウィンウィンとなればよいのだが。

 ウクライナ問題では、トランプは戦争を止める方向に向かうだろう。ウクライナの将来の安全保障、NATO加盟に向けプーチンを説得できるかが鍵となる。

 田中氏は、このほか朝鮮半島で日本が枠組みづくりに参加することの重要性や、トランプのガザ所有発言の真意についても解説。また、「EUはトランプの掲げる関税に対抗措置を取る」としつつも、関税は交渉のきっかけに過ぎない可能性も示唆した。さらに、日本国内の情勢については「少子高齢化、財政赤字の削減など問題が山積するなか、政治家は年収の壁、教育無償化など目先の選挙対策につながる政策しか考えていない」と政治家を批判。「石破政権は大連立で足場を固め、アジアとの連携を深め、米国に意見できるようになるべき」などと訴えた。