「ロシアによるウクライナ侵攻と国際社会」
ロシア・ウクライナ戦争は両国や欧州にとどまらず、インド太平洋にも多大な影響を与える問題だ。
西側諸国から引き離そうとしてウクライナに戦争を仕掛けたロシアだったが、却ってウクライナと西側諸国を接近させることとなったのは大誤算だ。
ウクライナが停戦に応じないのは、ウクライナにとって停戦は平和にはつながらず、安易に妥協すればロシアの支配が強まるだけということをミンスク協定で身に染みているからだ。ブチャやボロディンカの虐殺を和平交渉と並行して加速させる恐れすらある。
ゼレンスキー大統領は停戦交渉条件を見直し、「平和の公式」として締結の10条件を挙げた。日本政府も支持しているが、全てを達成するのは非現実的とも言える。
反転攻勢を続けるウクライナだが、前哨戦にしては大きな被害が出ており、雨季になる10月前に突破口を見出したいところ。ロシア軍が国内から撤退するまで、ウクライナが停戦を考えることはない。
今年になって平和の使者的に振る舞い、仲介役としての存在感をアピールする中国だが、具体的な行動はなく、ロシア側の立場に立ち、この戦争をあえて「ウクライナ危機」と評するほどで当面仲介する考えはない。停戦後、中国が復興ビジネスに参加してくることは確実で、中国による一方的なインフラ投資となる可能性もありながら、ウクライナは中国の機嫌を損ねるわけにはいかないのが実状。
一方、ロシア側はガルージン外務次官によって停戦への7条件が提示されたが、ロシアが占領する領土の放棄を求めるなど、ウクライナにとって到底呑めるものではない。
ウクライナが停戦の頼みとするのはEU、G7、NATOだが、どれも一枚岩ではない。続投を決めたトルコのエルドアン大統領に部分的な仲介の期待が寄せられるが、欧州の安全保障にとってはプラスにならない部分も多い。いずれにせよ、ウクライナは反転攻勢が終わるまで停戦を考えることはない。
東野氏は、このほかロシア・ウクライナ戦争に対するアフリカ諸国、インドネシア、日本の立場についても詳細に解説した。